summer vacation(新平)

いつもどおり、電話で互いの事件について報告し合っている時だった。
「夏休みは旅行するぞ。おまえ、パスポートはあるだろう。南の島に行く。そこで夏休み中、2人でのんびり過ごすんだ。」
「そこでまた事件が起きるんか?」
新一と出かけると必ずといっていいほど事件に遭遇する。もはや定番だ。
「無人島に行く。2人きりなら事件に遭うこともない。」
「無人島か。悪くはないけど、そこで1ヶ月も生活できるんか?」
「おまえと一緒ならできる。」
そう言われて悪い気はしなかった。
「ここんとこ忙しかったから、読みたい本がたまっとるんや。持てるだけ持っていきたい。」
「同感だ。あとサッカーボールがあればそれでいい。」
「竹刀は持っていきたいな。素振りは欠かさんことにしとるから。」
話が盛り上がる。
だが、現実味は薄かった。
一通りお互いの希望を述べたところで、平次が新一に尋ねる。
「それで、ほんまの夏休みの予定は?いくつか後回しにしてた事件があるんやろう。」
図星だったのか、新一は電話の向こうで黙り込んでしまった。
「悪い。当分会いに行けそうにない。」
新一が申し訳なさそうに告げてきた。
「お互い様や。まあそれぞれ充実した夏休みが送れそうやからええんじゃない?」
「そういうことにしておくしかないだろうな。」
不満はあった。だが事件を投げ出すような真似はしたくない。
「暇見つけて会いに行く。それでええやろう。」
「随分と甘やかしてくれるんだな。」
「そんなつもりはない。俺が工藤に甘えたいだけや。」
その一言で、新一はやる気を出す。
「いい夏休みになりそうだな。」
新一の言葉に、平次も同意する。
再び事件の話に戻る。
話をしながら、数日後には始まる夏休みのことを考え、心を浮き立たせた。

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