3月 2012Monthly Archives

スコーン(米英)

パサパサで、口当たりが悪く、味も薄くておかしい。見た目もいびつだ。
イギリスの作るスコーンは、はっきり言って不味い。
それなのに……
「イギリス、スコーン焼いて。」
イギリスの家に遊びに来たアメリカは、必ずそう言う。
「またかよ。」
文句を言いつつ、イギリスはすぐに作業にかかる。口では嫌そうにしているが、キッチンに向かうイギリスの足取りは軽い。
アメリカが待つこと一時間弱。
「出来たぞ。」
イギリスが、笑顔で出来上がったスコーンを運んでくる。
この時だけ、イギリスは満面の笑顔をアメリカに向けてくる。
だからアメリカは、毎回ここに来るたびにスコーンを頼むのだったが。
「これ、食べなくちゃならないんだよなぁ。」
イギリスに聞こえないくらいの小声でアメリカは呟いた。
「何か言ったか?」
「いいや、何も。」
アメリカは皿からスコーンを手に取ると、これでもかというくらいたっぷりのジャムを乗せてみた。