5月 2012Monthly Archives

sunshine(新平)

平次が笑顔で振り向いた。
その瞬間、新一の目から一粒の涙が落ちた。
「工藤、どないしたん?何で泣いとるんや?」
この程度の涙なら、目にゴミが入ったと応えたところで平次は信用しただろう。だが咄嗟にそんな上手い言い訳が出せなかった。
「眩しかったんだ。」
平次の笑顔が眩し過ぎて、思わず涙が出てしまった。
「曇りやで。」
平次が訝しげに新一に言う。
「それでも、眩しいんだよ。」
天気は関係なかった。
「しゃあないなぁ。」
平次は被っていた帽子を取ると、新一の頭に乗せた。
「少しくらいは日よけになるやろう。」
帽子から、平次の匂いがした。本格的に泣いてしまいそうだ。
新一は帽子を目深に被り、何とか涙を堪えた。