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ファンタスティック(快平)

久し振りに会ったというのに、平次は読書に耽っていた。かまって欲しくて邪魔しても、平次は本から目を離さない。
平次が本を閉じたのは、快斗の希望に沿ったからではなく、ただ単に本を読み終えたからだ。
だがすぐに平次は次の本に手を伸ばしていた。
「そんなにおもしろい?」
「最近嵌っとるんや。」
平次が読んでいたのは、論理学の入門書だった。
「俺はロジックよりトリックの方がおもしろいと思うけど。」
快斗がバラを一輪取り出し、平次に差し出す。
「そのトリックかて、論理的に説明つくやろう。」
平次の言うとおりだ。
だからといって、これ以上本に平次の視線を奪わせるつもりはない。
「じゃあ、こういうのは?」
快斗が一瞬動いたが、どう動いたのか平次の目には止まらなかった。
気がつけば、辺りを無数のシャボン玉が舞っている。
シャボン玉に光が反射し、キラキラと輝いている。
「おもろいやないか。」
平次は手にしたばかりの本を開くことなく置くと、幻想的な光景にしばし視線を留めた。