梅雨が明けたら(新平)

「梅雨が明けたら会いに行く。」
電話で平次にそう告げられ、新一はカレンダーに視線を向ける。
例年なら今週中には梅雨が明けそうだ。つまりは週末には来るということか。
「わかった。」
平静を装って応えたが、心の中では平次に会える喜びでいっぱいだった。
けれども電話を切ったすぐ後に付けたテレビの天気予報に、新一は一気に肩を落とす。今年の梅雨明けは例年よりも遅いらしい。
平次はそのことを知っていて梅雨明けに来ると言ったのだろうか。もし知らなかったとしても、やっぱり週末に来ると訂正してくるような性格ではない。
こんなことなら梅雨明けと言わせず、週末とはっきり決めておくんだったな、と溜め息が漏れた。
翌朝は、やはり雨。なのに初夏らしく気温だけは上がっている。
この湿度でこの気温は、真夏以上の不快感を感じさせられる。しかも週末会えると思って期待した平次は、恐らく来そうにない。
僅かな望みを込めて平次に電話をしたものの、週末来るという言葉を聞くことはできなかった。
来ないつもりではないと思う。いくら例年より遅いとは言え、梅雨明けはそろそろ訪れるのだから。
後数日の我慢だ。新一が自分にそう言い聞かせる。
けれども天気予報で今年の梅雨はかつてないほど長くなりそうだと聞かされてしまい。心が折れかける。
会いたい、と打ったメールは、未送信のままだ。
空以上に、心の中がジメジメしている。
新一は、ぱらつく雨の中、傘をささずに歩き出した。

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