3月 2011Monthly Archives

建設的な行為(新平)

たまにしかこない東京で、平次がやることは大抵決まっている。事件の推理か、セックス。
正直な話、どちらも好きだったりする。
今日も東京の新一の家に入るとすぐに、玄関でしてしまった。その後、リビングに移動して、もう1回。まだ寝るには早い時間だったので、この後寝室で更にすることになるだろう。それはそれで、悪くなかったが。
「なぁ工藤、たまにはもっと、俺ら、建設的なことできへんか?」
ソファの上で新一に抱き締められたまま、平次が言う。
「子作りしてるんだから、充分建設的だろう。」
そう応えながら、新一が、軽く平次にキスをする。
「いくら工藤が種出しまくっても、俺、孕まへんで。」
「それは残念。」
大して残念でもなさそうに、新一が応える。
「工藤とするの好きやから、するのはかまへんけど。そればっかりっちゅうのはどうかと思う。」
前回平次がここに来た時は、まる2日間、服を脱いだままだった。
「じゃあ、飯でも作るか。俺、夕食まだだったんだ。おめえも食ってこなかったんだろう。」
「性欲満たされたら、食欲も満たされた。」
「俺はまだ満腹じゃねぇぞ。」
新一はソファから立ち上がると、玄関へと向かい、脱ぎ散らかした2人の洋服を持って戻ってくる。
服を着直し、キッチンへと向かう。
「何が食いたい?」
「工藤が作れるもんならなんだってええ。」
新一も平次も、まともな料理など出来なかった。食事はいつも切って盛り付けるだけのものか、平次が来る日に合わせて蘭が多めに用意してくれているもので済ませている。
「すき焼きかしゃぶしゃぶ出来るようにって、牛肉買ってきてもらってるんだ。肉じゃが作ってみようぜ。」
作り方を調べてくる。新一はそう言うと、リビングのパソコンの電源を入れた。
インターネットでレシピサイトを検索し、作り方を調べる。平次も横からディスプレイを覗き込む。
レシピを頭に叩き込むと、2人はキッチンへと戻った。
分量をきちん量り、手順どおりに作業を進める。
完成した肉じゃがは、初めて作ったにしては上手く出来ていた。
パックのご飯をレンジで温め、茶碗に盛り付けダイニングテーブルへと運ぶ。
インスタントの味噌汁を添えれば、完璧な夕食となった。
2人が、夕食を始める。
「美味く出来たな。」
「そうやな。」
新一と平次が、食事を進める。
「今まで料理ってやろうと思ったことなかったけど、おまえと一緒だと楽しかったな。」
「俺もそうや。せやけどこんなに美味く出来るんやったら、やるだけの価値はある。」
美味しいし、楽しい。それはすごく幸せなことだった。
「明日は材料買いに出て、何か作ってみようぜ。ハンバーグとかどうだ?」
「あっ、それ、いいかも。」
明日のデートは、近所のスーパーと決まった。
「建設的だな。」
「建設的やな。」
食事を作る。今までにはなかったことだ。
2人の付き合いは、それなりに長くなっていたが、まだまだ初めてのことはあるようだ。
食事を終え、2人で一緒に後片付けをする。その後は、寝室に向かうまでの僅かな時間も惜しんで、キッチンで身体を繋ぎ合わせる。
翌日、スーパーへと向かっていた新一の携帯電話に、目暮から事件の知らせが入る。
事件の捜査と、セックスと、料理。
平次が東京に来た時の楽しみが、少しだけ増えた。