4月 2012Monthly Archives

4月1日+1ヶ月(新平)

「工藤、好きや。」
平次の突然の言葉に、新一は嬉しくて平次の身体を抱き締めようとしたが。
新一が動き出す前に、平次はすぐに言葉を続ける。
「嘘や。」
「服部、おまえ、俺のことからかって面白いか?」
「からかったわけやない。エイプリルフール。」
平次が笑顔でそう応えたが。今日は5月1日。エイプリルフールは一ヶ月も前だ。
「おまえのエイプリルっていうのは5月って意味か?」
「バレンタインデーも一ヵ月後にお返しするもんやろう。だから、今日でええ。」
お返しと言われても、新一はエイプリルフールに平次に嘘を吐いたわけではない。それどころか、その日は電話もメールもしていない。
「わけわからん。」
「俺もや。」
平次は新一に笑顔を向けていたが、その表情はあまり見たことのない複雑な感情が混じっていた。
「おまえ、何がしたかったんだ?」
「そのまんまや。工藤に嘘が吐きたかった。」
やっぱりわけがわからない。だが、わかったこともある。
「服部、おまえ、はったりは使えても、嘘は吐けないタイプだぞ。」
「そうかも。だったら俺は本気で工藤のこと好きなんやろうな。」
新一は今度こそ平次を抱き締めようとしたが。
「信じた?俺かて嘘くらい吐けるやろう。」
平次が満面の笑みを顔に浮かべる。
騙された……とは思いたくない。
「おまえの嘘は聞きたくねぇ。」
嘘も真実も出させないよう、新一は平次の唇を自分の唇で塞いでやった。

どこもかしこも(新平)

「服部さぁ、俺のどこが好きなんだ?」
「顔。」
新一の突然の質問に、平次は軽く応える。
「そんなわけねぇだろう。」
「じゃあ、身体。」
平次の応えに、新一は不機嫌そうな顔を出す。
「おまえ、真面目に応えるつもりないのか?」
「応えとるやろう。顔も身体も、それ以外の工藤新一のどこもかしこも、俺は好きなんや。」
好かれている自信はあったが、そこまで言われるとは思っていなかった。さすがに新一も照れずにはいられない。
「服部、俺も……」
「冗談や。しいて言えば、頭脳やな。」
無難な答えだったが、それは新一が予想していた内容だった。
「初めからそう言え。」
「きちんと答えたんやからええやろう。それに、おもろいもんが見られた。」
不機嫌そうな顔、照れた顔。普段クールを気取っている新一からは中々出されない表情だ。
「俺はおもしろくないぞ。」
「すまんすまん。これで勘弁しろ。」
そう言うと平次は、新一の額にキスをした。そこは平次が好きだと告げた箇所のすぐ側だった。