7月 2011Monthly Archives

hot summer(ハボロイ)

セントラルは雨は多いが気候は年中温暖だ。
だが今年の夏は猛暑となっていた。
ロイの執務室は風の通りが悪いのか、嫌な暑さが篭っていた。
「ハボック少尉、勤務時間中なのだから、軍服は着たまえ。」
今はこの執務室にはロイとハボックしかいなかったので、暑さでだらけているくらいなら見逃すところであったが。内勤中にTシャツ姿はないだろう。ロイがハボックに上着を着るように言う。
「ズボンはちゃんと履いてるんだからよろしいでしょう。暑苦しいからむしろそっちの方を脱ぎたいのに。大佐も脱いだらどうですか?」
「私はこのままでいい。」
「大佐の部屋で2人きりのときは、脱ぎっぷりいいじゃありませんか。」
「私が脱いでいるのではなくて、君が脱がせているのだろう。」
「じゃあ今も俺が脱がせましょうか?」
「そんなことをしている暇があったら少しでも早くその机の上の書類を片付けろ。」
ハボックはロイに言われたとおりにするしかなかった。
だが時間が経ち、太陽の角度が変わるにつれ、執務室の中の温度は上昇していく。
「この暑さ、異常ですよ。何とかなりませんか?大佐だって、更に熱くする以外の錬金術、つかえるんでしょう?」
「黙って仕事をしろ。君は暑苦しいぞ。」
「大佐のその格好の方が暑苦しいです。ホークアイ中尉だって言ってたじゃありませんか。大佐が出るとこの暑い中余計に熱くなるって。」
「君たちは私のことをライターや暖房と一緒にし過ぎだ。」
「事実、そうでしょう。」
「わかった。涼しくしてあげよう。錬金術を使わなくても、それくらいできる。」
「水持ってきて浴びせかけるっていうのはなしですよ。」
「そんなことするか。この気温じゃ執務室が蒸し風呂になる。」
ロイは立ち上がると、ハボックの側に寄った。座ったままのハボックを、ロイが見下ろす。
「ハボック、別れよう。」
ロイの言葉に、ハボックの頭から一瞬にして血の気が引いた。
「大佐……?」
突然何を言い出すんだ?ハボックがそう問いかける前に、ロイが言う。
「嘘だ。だが一瞬、冷えただろう?」
「冷えるどころか、凍りついちまいました。でもそういう嘘は止めてください。すみません、俺が悪かったです。真面目に仕事します。」
「わかればいい。」
ロイは席に戻ると、仕事を続けた。
2人が黙々と仕事を進める。そんなことをしているうちに、そろそろ外勤に出た者たちが戻ってきそうな時間になった。
「ハボック少尉、仕事は捗っているかい?」
「おかげさまで。」
「それなら今日は定時には帰れそうだな。終業後に冷たいビールを飲みに行こう。私の奢りだ。」
嘘を吐いたお詫びだ。ロイが小声でハボックにそう言う。
「お供します。」
話がまとまったところで、外勤に出ていたリザたちが帰ってきた。
戻ってきた者たちの報告書は明日目を通すことにした。
勤務時間が終わり、ロイがすぐにデスクから離れる。
「今日は夜も暑くなりそうだな。」
ハボックを連れて執務室から出たロイは、そう独り言を出した。