会議の後の懇親会。イギリスは日本と会場の隅で話をしていたが。
視線はチラチラと会場の中央へと向けられていた。
「アメリカさんのこと、そんなに気になるんですか?」
日本が意味深な笑みを浮かべながらイギリスに言う。
「あれはかまわん。気になるのは、やつらの方だ。」
アメリカと一緒に居たのはフランスとスペインだった。
「あいつらが組むと、碌なことにならん。」
イギリスが苦々しい顔を出す。
「その辺りの事情はよくわかりませんが。気になるなら、行ってきたら良いのでは?」
「怪しい場所にわざわざ自分から飛び込む気はない。」
イギリスがふいと視線を逸らす。
その時、中央から近づいてきたのは。
アメリカだった。
「こんばんは、アメリカさん。」
日本が笑顔でアメリカに挨拶する。
「やあ。ちょっとそこの席、譲ってくれない?」
そこの席。イギリスの側。
「かまいませんよ。」
日本は理由も聞かずにすぐに席を立った。
「ちょっと、日本……」
イギリスが日本を引き止める。
「欧米事情に巻き込まれるのは不本意ですから。」
それだけ告げると、日本は去って行ってしまった。
アメリカが、イギリスの向かいの席に座る。
「何しに来た。」
イギリスが顔を背けたままアメリカに言う。
「最近の欧州事情を耳に挟んでね。口出ししに来た。」
「別に何もない。おまえは黙ってろ。」
「君とおしゃべりするつもりはないよ。口は使うけどね。」
そう言うとアメリカは、イギリスにキスをした。
突然のキスに、イギリスが驚く。目を開いたままキスをされたイギリスの視線の先には、フランスとスペインのニヨニヨとした笑顔。
やっぱり碌なことにならない。
八つ当たりでアメリカを殴り飛ばした後、イギリスはフランスとスペインに不満を告げに言ったが。
イギリスの言い分は、2人の娯楽にしかならなかった。
9月 2010Monthly Archives
最悪の敵国ら(米英)
薄幸美人(米英)
「ん?」
歩いている最中、アメリカは靴紐が解けていることに気づいた。
立ち止まってその場で屈み、靴紐を結び直そうとした時。ブチッと音を立てて、靴紐が切れてしまった。
縁起が悪い。アメリカが苦笑する。
「どうした?」
こういうタイミングの時ばかり、イギリスと出会ってしまう。
「靴紐が切れた。」
「そうか。」
アメリカに構わずイギリスは行ってしまうかと思ったが。そうではなかった。
イギリスがポケットから何か取り出し、アメリカに差し出す。靴紐だ。
「何でこんなもの持ってるんだ?」
思わずアメリカは怪訝そうな顔で尋ねてしまった。
「よく切れるだろう。」
持ち歩かなければならないほどよく切れるようなものではないだろう。
「同情したくなるよ。」
アメリカが、イギリスに聞こえないくらいの小声で呟く。
靴紐を取替え終えると、アメリカはイギリスに向き直った。
「靴紐の礼にランチ奢るよ。」
「どういう風の吹き回しだ?」
礼をされると思ってなかったのか、イギリスがそう言い返してきた。
「まあ、この程度のいいことくらいあってもいいだろう。」
イギリスの応えを聞く前に、アメリカが歩き出す。
奢りなら付き合ってもいいと考えたのか、イギリスもアメリカについてきた。
「どっちにとってのいいことなんだか。」
イギリスと並んで歩きながら、アメリカがそう呟いた。