6月 2014Monthly Archives

I love you.(新平)

「服部、月が綺麗だな。」
ソファに座って読書をしていた新一が、本を閉じて不意にそう言う。
「こんな真っ昼間から何言うとんのや。」
新一の向かいに座り同じく読書をしていた平次が、本から目を放しながら言い返す。
「夜に言ったんじゃ、俺の言いたいことが伝わらないだろう。」
「おまえの言いたいことがさっぱりわからん。」
「いいや、おまえにはわかってるはずだ。」
わかるか、と怒鳴りつけることもできたが、平次は少しだけ考えてみる。
窓から外を見る。今日は快晴。確か今日は満月の日のはずだ。それなら先ほどの言葉はやはり夜に言うべきことだろう。
それなのに、今、この時間に「月が綺麗だ」なんて言い出したと言うことは。
平次は本をコーヒーテーブルの上に置くと、立ち上がり、新一の隣に座り直した。
新一は平次の肩を抱き寄せ、キスをする。
「服部、愛してる。」
「最初からそう言え。」
「たまには違う表現をしてみてもいいだろう。」
「結果は同じや。」
「そうだな。」
まだ昼間だというのに。新一は平次を抱き締めたまま倒し、柔らかいソファに身を沈ませた。