6月 2013Monthly Archives

真夏のクリスマス(米英)

イギリスから電話がかかってくるのは珍しい。
「おい、アメリカ、おまえの所から不審な荷物が届いたんだが、誤配送か?」
不審な荷物は送っていない。普通にラッピングをして送りはしたが。
「間違いじゃない。」
「ただの遅延か。それにしても遅過ぎだな。」
「先週送ったものだから、そう遅くはないぞ。」
「えっ?」
電話の向こうからイギリスの驚く声が聞こえた。まあ、驚くのも無理はない。
「メリークリスマスと書いてあるぞ。」
「クリスマスプレゼントだからな。」
「どういうつもりだ?今は真夏だぞ。」
「クリスマスに贈ったら、俺が君とクリスマスを祝いたいかのように思われるじゃないか。用事はそれだけ?もう切るよ。」
素っ気無く言ってしまったのは、ただの照れ隠しだ。たとえ時期がずれたとしてもクリスマスプレゼントを贈りたかった、と口に出して言うことなどできない。
そのまま電話を切る寸前。
「……ありがとう。」
イギリスの声が小さく聞こえたような気がしたが。思ってもみなかった言葉に、驚き過ぎて電話をオフにしてしまった。

call my name(新平)

「工藤。」
平次が新一を呼んだ。だが、返事はない。
「工藤。」
聞こえているはずなのに、やはり無視。
「おーい、工藤。」
怒らせたわけではない。新一の横顔にも、不機嫌さは現れていない。
「工藤くーん。」
4度目で、ようやく新一が平次の方を向いた。
「なして返事せん。」
「名前で呼べ。」
「はぁ?」
ようやく新一が言葉を出したが、その意味がわからない。
「新一って呼べ。」
「なんで?」
「その方が恋人っぽい。」
あほ、と思わず言いたくなったが、今は新一と言い争うつもりはない。
「そんなんせんでも恋人やろう。」
平次が作った笑顔を新一に向けた。けれども新一は譲る気がなさそうだ。
「だったら名前で呼んでくれてもいいだろう。」
新一が何をそんなに拘っているのかわからなかったが。ここは平次が折れるしかないようだ。
「新一。」
平次が新一を呼ぶ。なんだかちょっと照れくさい。
「やっぱり工藤でいい。」
そう言いながら背けた新一の顔は僅かに赤くなっていた。
おもしろい反応だが、平次の表情も似たようなものだ。
当分は「新一」と呼ぶことはないだろうな、と思いながら、平次は再度
「工藤。」
と呼びかけた。